【後編】藤井聡太七段の強さの秘密を将棋のプロ棋士の野月浩貴八段のコメントから分析してみました!
写真:AbemaTV
2017年9月に発売された、藤井聡太新たなる伝説で藤井聡太四段(14)に関連する様々な将棋のプロ棋士からのコメントが書かれています。
前編に引き続き今回もAbemaTVの将棋チャンネルのアドバイザーもつとめている順位戦B級1組の強豪プロ棋士の野月浩貴八段のコメントから藤井聡太七段の強さの秘訣について会話形式でコンパクトにまとめてみました!
野月八段はコンピューターとはどのように付き合っていますか?
コンピューターは自分の将棋だけではなく、藤井四段の将棋も解析させて、どのような解析値になるのか調べるために活用しています。
はい。
あまり一致率は重要視していないのですが、藤井さんの将棋にはコンピューターと一致している手も多いのですが、コンピューターが2番手や3番手とする手と一致していることが多いと感じています。
そうなんですね。
コンピューターと同一な手というよりは、疑問手や悪手など、コンピューターの評価値が大きく下がるような手は基本的には指すことがないという印象ですね。
はい。
以前のコンピューターであれば、激しく攻め倒すという部分が強かったのですが、最近は相手に攻める隙を与えない手や薄い玉型でもギリギリのバランスを保って、戦う戦略が重視されています。
そうなんですね!
藤井四段もそういうコンピューターの差し回しに少なからず影響されている部分はあるように思いますね。
はい。
受けて勝てるという方針を決めたときや中盤での立ち回りなどバランス重視というのがよく分かります。
はい、ええ。
一般の人がイメージしているような、コンピューター将棋は「詰みを読む深さや速さ」とは違って、「しぶとくて粘り強くて負けにくい」というのがプロ棋士の認識しているコンピューター将棋の強さなんです。
認識がかなり違いますね。
コンピューター同士の対戦は相手の攻め筋を消す手が多いです。
渋くてすぐにはつぶされないという地味な手が多いので、意味がわからない手が多いのが特徴です。
はい。
そのほかには何かありますか?
人であれば歩を突き捨ててから、銀を前進させる順を選ぶことが多いのですが、コンピューターは銀を進めてから歩を突いてくるという手を選ぶことがあります。
かなり独特ですね。
人が見ると不思議な手なのですが、藤井四段も同じように不思議な手を選んでくることがありますね。
ええ。
だから、すべてがコンピューターと同じ手を選んでいるというわけではないと思いますが、参考にしている部分は大きいのではないかと思います。
はい。
コンピューター将棋が何を考えて、その手を選んでいるのかを藤井四段は理解しているように思われます。
そうなんですね。
具体的には奨励会員やプロ棋士がコンピューターの評価値を見て、局面の評価から差しにくい、差しやすいと分析しているのに対して、藤井四段は自分の中での評価値と照らし合わせて、その乖離を埋めていくという作業をしていると思います。
はい。
藤井四段はコンピューターの指し手に対して、取り入れられる部分とそうではない部分をうまく取捨選択している点が普通の人とはちょっと違う印象です。
ええ。
なんというかコンピューター将棋の意図を読解しようとするプロセスが違うというか、説明しにくいん部分なんですけど。
そういう意味ではただ単純に藤井四段の手をコンピューターに解析させても、あまり意味がないんです。
コンピューター将棋との自分なりの付き合い方が独特な点、それが彼の強さの源泉だと思います。
ありがとうございました!
【考察】
後編ではコンピューター将棋との付き合い方がプロ棋士や奨励会員との具体的な違いについて、野月浩貴八段の分析が冴えていた印象です。プロ棋士でもコンピューター将棋を取り入れているのは羽生善治竜王や千田翔太六段が有名でしたが、豊島将之棋聖が研究会を辞めて、独自に研究を始めて初タイトルをとったことで、今後もどうコンピューター将棋を師として、自分に取り込んでいくのか?これがプロの課題になりそうです。
【参考】
※注意事項※
・段位などは当時のものとなります。
・要約した内容は原文ママではないため実際に意図した内容と異なる場合があります。