藤井聡太七段の強さの秘密を将棋のプロ棋士の鈴木大介九段のコメントから分析してみました!
写真:AbemaTV
2017年8月に発売された、天才棋士降臨・藤井聡太 炎の七番勝負と連勝記録の衝撃で藤井聡太七段(14)に関連する考察が出ています。
第一回目は将棋連盟の常務理事で久保利明王将や藤井猛九段と並んで振り飛車御三家で豪快な攻める棋風で有名な鈴木大介九段(44) が多くを語っています。実際の紙面では鈴木九段の独り語りですが、会話形式でエッセンスをコンパクトにまとめてみました!
まずはアベマTVで放送された藤井聡太・炎の七番勝負の裏話をお聞かせください。
藤井君に会ったのは、彼が8才の時、東海研修会で指導を行ったときです。
その時は将棋盤からやっと顔がのぞくくらいのちいさな少年でしたが、詰みの読みの深さはすごかった。
そうなんですね。
そのあと彼が四段になるまで会っていないのですが、風の噂で、その成長ぶりは聞いていました。
はい。
炎の七番勝負は野月浩貴八段と二人で立てた企画です。
そうなんですね。
ネットで藤井聡太四段とよく指していたプロ棋士たちからは「彼は強い」という声を聴いていましたし、佐々木勇気六段がとくに推奨してくれていたので、若手に対して厳しい目を持っている佐々木君が「強い」というのだから信頼できるなと思いました。
はい。
新四段の上位の力は最低あるだろうし、もしかしたら若手のトップクラスのレベルはあるかもしれないと当時、私は藤井四段を評価していました。
ええ。
しかし今回の炎の七番勝負で藤井聡太四段の評価は大分変わりました。
というと?
2局目までは、まだ話していても幼さを感じていましたが、対局を重ねる毎にしっかりした印象になってきました。
また将棋の内容としても最初は荒っぽさを感じていましたが、対局を重ねる度に安定感が増してきた印象です。
はい。
羽生さんと指したときの藤井四段は別人と思うくらいで、一流のプロ棋士の適応力の高さと成長力を痛感しました。
そうなんですね!
それでは各対局の個別のコメントをお願いします。
まずは増田康宏四段との初戦です。
増田君は全体的にしっかりした将棋で関東の若手の中でも有望株です。
角換わりの展開となりましたね。
藤井聡太四段の将棋を見る前は攻めが強いと思っていたんですが、実は本当に受けが強いことが分かりました。
自分の読みを信じて、受けに回って勝ったのは、とても印象的でしたね。
では次は永瀬拓矢六段戦をお願いします。
この勝負は永瀬君が時間攻めも含めた勝負術で勝利しました。
ゴキゲン中飛車に対する超速の最新型ですね!
勝負に負けたとはいえ藤井四段は苦しくなっても永瀬六段に決めてを与えない差し回しが随所に出ていました。
苦しくてもなかなか崩れない、バランス感覚がいいんです、負けてもなお強しという印象でした。
はい。
若手の将棋は好手を放って勢いに乗って勝つのではなく、悪手率を下げて勝ちを目指すという将棋になっていきそうです。
では次は第三局の斎藤慎太郎七段戦をお願いします。
斎藤君は関西期待の若手のホープの1人です。棋聖戦で挑戦者になるなど実力は十分です。
はい。
今回もゴキゲン中飛車対超速になりましたね!
第二局までは、すぐに秒読みになっていた藤井四段ですが、方針を変えて早指しに適応してきました。
ええ。
将棋としては駒の損得よりも駒の効率を重視しており、羽生さんに近い感覚を持っている印象です。
さらに渋い手も連発して、勝利をつかんだことは大きいですね。
はい。
次は中村太地六段戦をお願いします!
関東では十分な実績がある若手のエースです。
藤井四段先手の角換わりでしたが、駒損でも中断の駒の多さで頑張るという方針でしたが苦しい展開だったと思います。
はい。
ただし、中盤で崩れない。引き付けるだけ引き付けてから反攻に転じています。攻めを切らすというより、いなすのが上手い印象でしたね。
ええ。
終盤の攻めの数は少ないのですが、少ない手数で相手をきっちりと仕留める。それだけ攻めだすとあっという間に終わってしまう将棋でした。
矢倉戦になりましたが、序盤で藤井四段が苦戦しました。
はい。
角出が印象的で受けに利かせたのが大きい。
終盤は詰めろではないことを見切って勝ち切った。手を稼ぐ技術と終盤の速度計算が連動していた印象ですね。
この対局が一番衝撃的でしたね。
具体的には?
ダイレクト向飛車に対して、居飛車側から玉頭をせめて勝った将棋を初めて見ましたね。
そうなんですね。
陣形の構えも昭和初期というか江戸時代の構えといった古風な構えで、中学生の藤井四段が指しているのがすごい。
現代的な序盤作戦だけではなく、こんな序盤戦もできる藤井四段は他の若手との違いが大きいと思いますね。
ええ。
作戦勝ちからノーミスでの快勝。佐藤九段も感想戦はほとんどやることがなかった印象ですね。
最後の締めは羽生善治三冠をお願いします。
藤井四段の桂ポンでソフト的には先手持ちなのですが、羽生さんはそう思っていないし、実際に中盤は難しい展開となりました。
はい。
歩の上に金を乗せる感覚が理解できません。でもこれが好手らしいんですね。
ソフトではそうなりますね。
深浦戦でも出た短期的に玉を固くする歩打ちですが、長期的にみると駒が伸びないので私なら差さない手です。
ええ。
藤井四段の特徴の1つとして、対局者より歩をたくさん持っていることが多いです。
そうなんですね。
序盤力の差で相手に先攻されているということも考えられますし、相手の歩切れを重要視するソフトの考え方ともいえます。
どちらにしても中盤まで力を溜めて、終盤の爆発力につなげることは確かですね。
はい。
もう1つは藤井四段が攻めるターンが非常に少ない。攻めるターンは少ないものの、確実に詰みまで持っていく。
そこまで計算して将棋を指しているならすごいことですね。
はい。
藤井聡太七段について語っていただき、ありがとうございました!
【考察】
野月浩貴八段というか佐藤慎一五段のコメントにもあったように、角の動きについての考察がありました。また受けが強いというのもプロ棋士の藤井聡太七段の強さの秘密で、さらに攻めるターンになったら一気に勝ち切る。これも同じでした。
なお歩の上に金気の駒を置くことはソフト的な考え方だと野月八段も触れていましたが、歩の使い方や歩を手持ちにしていることが多い点は他のプロ棋士にはない視点だと感じました!
【参考】
※注意事項※
・段位などは当時のものとなります。
・要約した内容は原文ママではないため実際に意図した内容と異なる場合があります。